1995年9月4日に沖縄で何が起こったのか――12 歳の少女暴行事件

策略―女性を軍事化する国際政治

シンシア・エンロー『策略:女性を軍事化する国際政治』(上野千鶴子監訳、佐藤文香訳)岩波書店、2006年より。


「小学六年生の沖縄の少女をレイプして起訴された、三人の若いアメリカ人男性の誰にも前科はなかった。三人とも、テキサス州ジョージア州の貧しい家庭に育ったアフリカ系アメリカ人だった。彼らはますます難しくなった米軍の入隊試験に合格しようと懸命に勉強し、軍隊勤務を自分たちのキャリアを拡大する機会としてとらえていた。彼らの身近にいた女性たちは、自分たちがよく知っていて、とても高い期待をかけていたこの若者たちが、知らない女性を、ましてや、小学生を相手に手荒な暴行をしたなどとは信じることができなかった。彼らの母や姉妹や妻 たちは、最初、米軍がこの若い黒人兵たちをスケープゴートにしようとしているのではないか、つまり、日米当局者の外交交渉のなかで捨て駒として利用しようとしているのではないかと疑った。米軍の人種差別の長い歴史を考えれば、この推測もあながち不合理とは言えなかった」(p .71-72)


「息子たちがあの休暇の日に何をしたのか――友人の説明や、逮捕後に息子たち自身が供述したことが、日本の検事たちの起訴状とまもなくかなり重複する ようになった。それを聞くのは、彼女たちにとって耐えがたいことだった。」(p.72)

三人の男たちと、後に去った四人目の男 は買春しようと話し合ったが……ギル一等兵が金がないと言いだし、代わりにレイプをもちかけた。他の者たちは、はじめは冗談だと思っていたが、そのうち、話し合いは真剣なものになっていった。彼は、ハープ二等兵が「止めさせるようなことは何もしなかった。なりゆきにまかせていた」と言った。

 四人の兵士たちは車を借りた。運転していたギル一等兵が、あるところで、レイプを提案した。男たちは食料雑貨店に行き、ハープ二等兵 とリディット二等兵が粘着テープとコンドームを買いになかに入った。この時点で四人めの男は仲間たちが本気でレイプする気だと気づき、その場を去った…

 そして男たちはえものを探して走りまわった。……午後八時頃、彼らは少女を見つけ、車を止めた。リディット二等兵とハープ二等兵が車を降りた。

 ハープ二等兵が道を聞くようなふりをした。リディット二等兵は背後から少女の首に手をまわし、ハープ二等兵が彼女の顔を殴った。リディット二等兵は彼女を車に押しこみ、二人して、彼女の目と口をテープでふさぎ、手足をしばった。ギル一等兵はサト ウキビ畑に囲まれた遠くの農道に車を走らせた。

 ……レイプは八時二〇分頃終わった。男たちは車で走り去り、少女を置きざりにした。彼女は助けを求めて近くの民家に駆けこんだ。(pp.72-73)