普天間・辺野古 歪められた二〇年

普天間・辺野古 歪められた二〇年 (集英社新書)

宮城大蔵・渡辺豪『普天間辺野古 歪められた二〇年』集英社新書、2016年より

「長年にわたる沖縄の過重な基地の負担を軽減するために、最も危険な普天間基地を返還する。その「決断」がなぜ、辺野古への新基地建設強行へと転じてしまったのか」(p.216)

 

「劇的に演出された一九九六年四月の普天間返還発表時には、「代替施設」は既存の基地内のヘリポートとされ、それと岩国や米本土への分散を組み合わせることによって機能を維持し、普天間の「返還」を可能にするとされていた。しかしヘリポートは時をおかずして本格的な滑走路を持つ巨大施設へと膨れ上がり、突如浮上した「海上施設案」を経て、辺野古沿岸部を大規模に埋め立てる「現行案」に行き着いた。「普天間返還」は、沖縄県内に大規模かつ新たな機能を加えた「新基地」を建設するプロジェクトに変質したのである」(pp.216-217)

 

「地元業者が利益の得られる埋め立てを求めるなど、沖縄の「利権体質」が本来の構想を歪めたとの指摘もある。しかし地元業者にそこまでの力があるだろうか。本来の「返還」を外れて「新基地建設」に膨張した主要因は、我が物顔で過ごせる居心地のよい沖縄に、日本側の負担で新しく高機能な「新基地」を欲した米海兵隊や、海兵隊との同居を嫌う米空軍の組織利益にあると見るのが妥当であろう。それに異議を唱えることなく「国策」として遂行しようとする日本政府に対し、「もらえるものはもらいますよ」とばかりに便乗したのが、利権を求める一部の業界関係者であったという図式である」(p.217)

 

「世に流布するイメージとは異なり、沖縄の海兵隊尖閣防衛に関与する存在ではない。そもそも在沖海兵隊の主力はグアムなどに移駐することがすでに決まっており、沖縄に残るのは司令部と第三一海兵遠征隊(MEU)の約二〇〇〇人で、主な即応任務は有事の際のアメリカ人救出である。これが日本の抑止力に不可欠だというほど、二二万人を超える自衛隊は無力なのであろうか」(p.227)