コロナ後は自給自足への回帰?

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2020年4月号

ブランコ・ミラノビッチ「パンデミックによる社会破綻――経済政策で社会崩壊を阻止するには――」『フォーリン・アフェアーズ・リポート』(日本語版)2020年 No.4より。

 

世界は、これから非常に大きな変化に直面していくことになるだろう。自給自足的な「自然経済」へ回帰していくのかもしれない。これは、まさしくグローバル化とは逆方向への変化だ。グローバル化が大きく異なる経済間の国際的分業を意味するのに対して、(物々交換を前提とする)自然経済への回帰とは、国家が自給自足的な経済に向けて逆コースを歩んでいくことを意味する。もちろん、この流れが必然だとは限らない。(p.7)

 

危機が続けば、グローバル化はおそらく解体していく。危機が長期化し、人、モノ、資本移動を妨げる障害が長期的に存続すれば、状況は自然経済の方向へ向かっていく。

この流れを維持することを求める利益団体も組織され、次の感染症への恐怖から、自給自足の経済を求める声も大きくなるだろう。この意味において、経済利益と健康(公衆衛生問題)への正当な懸念が自然経済を求めて完全に重なりあうかもしれない。(p.7)

 

ウイルス危機の余波のなか、専門職を身につけていない人々が優位を手にすることになるだろう。自分で食糧を生産でき、政府が提供する水や電力に依存していなければ、食糧のサプライチェーンが引き起こす混乱から逃れられる。感染のリスクも少ない。感染しているかもしれない人が調理した料理に依存することもなければ、感染しているかもしれない修理人に家に来て何かを直すように頼む必要もない。他者に依存する部分が少なければ少ないほど、より安全でよい暮らしができる。深く専門化された経済において優位を与えてくれたものは、今や不利益、弱点となる。(p.8)