もしも「死にたい」と言われたら(松本俊彦)

 

もしも「死にたい」と言われたら  自殺リスクの評価と対応

もしも「死にたい」と言われたら  自殺リスクの評価と対応

  • 作者:松本俊彦
  • 発売日: 2015/06/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 松本俊彦『もしも「死にたい」と言われたら 自殺リスクの評価と対応』中外医学社、2015年より。

 

 精神科医療関係者のなかには、「死にたい」と訴える患者に「命を粗末にしちゃいけない」と説教したり、リストカットや過量服薬を繰り返す患者を叱責したりするスタッフがいまだに少なくないからである。

 また、精神科医療関係者の教育体制も気になる。たとえば、精神科のレジデントに、「患者に自殺念慮について質問するのは是か非か? そして、それはなぜか?」、「患者から『死にたい』といわれた場合の対応は?」と質問すると、躊躇なくすらすらと答えられる者は意外に少ない。(「はじめに」より)

 

要するに、自殺リスクの評価と対応という、文字通り「命にかかわる」重要な仕事を、ほとんど「直感」や「常識の延長」で行っている精神科医療関係者は、想像以上に多い可能性がある。はたしてこのような状態で、かかりつけ医から紹介された患者や、救命救急センターから診察を依頼された自殺未遂患者の自殺リスクを正しく評価し、適切に対応することができるのであろうか?(同上)

 

これからの自殺対策は、単に「精神科につなぐ」だけでは不十分であり、「つながった後の精神科医療の質を向上させること」こそが重要な課題となる。その第一歩として、自殺リスクの評価と対応の基本をある程度、系統的に解説した本が必要ではないか。それが、筆者が本書の執筆を思い立った理由である。(同上)