山田満、小川秀樹、野本啓介、上杉勇司編著『新しい平和構築論』書評

新しい平和構築論

新しい平和構築論

 今回は今考えている最中の「民営軍事会社と国連PKOの関わり」について示唆を受けた章のみまとめた。特に、『変わりゆく国連PKOと紛争解決』の著者である上杉勇司氏が書いた第4章の「平和維持と平和構築の接点」が参考になった。この章では、国連PKOと多国籍軍の相違と分業の可能性について、実例を伴って紹介されている。多国籍軍と民営軍事会社では組織構造も活動目的もまるで異なるが、「紛争のどの段階で、どのような機能を担って介入するか」次第で、成否が変わってくるというのは共通するのではないかと改めて思った。少なくとも国連PKOや多国籍軍の介入の仕方の事例から、民営軍事会社が示唆を受けるべきことはたくさんあると思う。


 「現場に出ようとしない人間は、国連機関ではいらない」と言った緒方貞子。(緒方貞子『私の仕事』所収の「世界へ出ていく若者たちへ」より)その思いを今まさに現実のものにしている人たちがこの本の執筆陣である。今までまるで知らなかった現場の様子を、この本からいろいろ学ぶことができた。将来平和構築活動に関わりたいと思っている若者で、理想と現実のどちらからも遠ざかりたくないと考えている人には、手頃な入門書であると思う。