菅原出『外注される戦争―民間軍事会社の正体』書評

外注される戦争―民間軍事会社の正体

外注される戦争―民間軍事会社の正体

 2003年にピーター・シンガーCorporate Warriors(邦題『戦争請負会社』NHK出版)を出し、民間軍事産業の全体像を提示した。シンガーが巨視的・理論的な分析を行ったのに対し、この本は民間軍事会社(PMC)をより微視的に描き出しており、他の類書と比べても極めて優れた報告となっている。特に著者が実際に参加した、あるPMCが提供している「ジャーナリスト向けセキュリティ訓練」プログラムのルポ(第7章)は非常に面白く、その内容は息を呑む展開を見せている。いまPMCがなぜここまで必要とされ、またそれに伴ってどのような問題が噴出しているのかを詳細な事例で示し、シンガーの本で指摘されていたこの業界の問題点をより具体的な形で提示してくれている。このテーマについて書かれた邦書の中では、ダントツでおすすめの1冊である。


 あとがきで著者は、英PMCのアーマーグループ社の日本法人にコンサルタントとして加わったことを報告している。評者もPMCについて論文を執筆中なので、この業界の今後の変化をぜひ本書の筆者にフォローしてもらいたいと思う。