「モチロン アイシテル!」
「旅先、獄中、そしてもうひとつ、夫婦間で愛の手紙がやりとりされる状況がある。どちらかが病に倒れ、明日をも知れない状態になったときである。病は、夫婦の愛情をあらためて確認するきっかけともなる。病床からの恋文をいくつか引いてみる。最初は、平成十八年七月に亡くなった橋本龍太郎元首相である」(p.134)
「モチロン アイシテル!
ちょっとゆがんだ、跳ねるような文字で、大きくそれだけが書かれている。
平成十四年二月二十六日夜、橋本は自宅で心臓発作を起こした。運ばれた病院で応急処置を受け、症状が落ちついた二十八日。夫人は酸素マスクやチューブのため喋ることのできない橋本に紙とペンを渡し「何か言いたいことある?」と訊いた。そのとき橋本が書いたのがこの言葉だった」(p.134)
「「“愛している”という言葉は、あの人にとっては“こんにちは”みたいなものなんです。しょっちゅう言っていましたから」と久美子夫人。ではぜひ若い頃の甘いラブレターもとお願いし、結婚二年目の頃の手紙を見せてもらった」(pp.134-135)
「「こんな手紙を発表してしまっていいのかしら。龍が生きていたら怒られてしまうわね」と夫人。若い頃の手紙は、子供たちの目にふれないよう、たびたび場所を変えて隠していたという。「今回、お見せするために探して、子供たちにもばれちゃった。実はもっとすごいのが沢山あるんですよ。みんな大笑いで、もう、恥ずかしかったわあ」大らかに夫人は笑う。この明るさが、苦境のときも橋本を支えたことは、よく知られている」(pp.135-136)
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