自分の心も自分で守らなくてはならない

キレる!: 脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」 (小学館新書)

中野信子『キレる!:脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」』小学館新書、2019年より。

※強調は原文

やる気や責任感というものは誰もが持ちうるものではないので、それは素晴らしいことです。しかし、私がこれまで出会った責任感が強い人には“自分を大事にする習慣”が足りないと思える人が多いと感じます。(p.154)

 

自分を大事にするとは、自分を甘やかすとか、休暇をとるという“身体”を守る行為・行動だけではありません。相手が自分を否定するようなことを言ったときに、適切に言い返して自分の“心”を守るといったことも含みます。誰かが友達の悪口を言っていたら、「そういう言い方はよくないよ」と注意できるのに、自分が言われた場合はできない。上司や同僚から自分をバカにするようなことを言われて傷ついても言い返せない、ということはありませんか? これは、“自分を大事にしていない”ということなのです。大事にするとは、身体だけではなく心も含めて大事にすることです。(p.154)

 

 特に心にダメージを受けるのは、自分が軽んじられていると感じるときです。

 例えば「忙しい」「仕事が多い」という状態よりも、「自分の頑張りが認められずバカにされる」「自分には価値がない」と感じることのほうが、精神的には傷つきやすい状態です。

 言葉や態度であなたを軽んじるような相手から自分を守るためには、まずは言葉で“上手に言い返す練習”が有効です。

 例えば「そんな仕事しかできないの?」などと嫌味を言われた場合、

 「そんな仕事ってどういう意味ですか?」「何と比べてそんな仕事なのですか?」

 とストレートに聞き返すのもよいでしょう。

 「私は仕事ができないかもしれませんが、あなたの立場でそれを言いますか? あなたのような立場の人が、そういう言い方しかできないんですか?」

 という言い方で切り返してもよいでしょう。

 容姿をからかってくる人には、

 「そんなこと言いながら私に気があるんでしょ?」

 とお笑い芸人のように、うまく笑いに変えながら言い返すというやり方もありますよね。(pp.155-156)

  

 嫌なことを言われたのに言い返さないのは、大げさにしたくない、いい人に思われたいなど、さまざまな理由があるかもしれません。

 けれども、それによって自分の心に傷がつきます。そんなときは、傷ついた自分を受け入れ、なぜ傷ついたのか、どうしたら傷つかないようにできるのかを考えることが必要です。自分を大事にして、うつになるのを防ぐためには、自分自身と上手にコミュニケーションをとれているかどうかがポイントなのです。(p.156)