口頭発表の作法と技法

知の技法

30年近く前の古い本ですが、『知の技法』の「口頭発表の作法と技法」という章を読んでいます。これは学生向けのテキストですが、実際には学会などでも守れていない先生方をよく見るので、常に意識していないといけないのでしょうね。http://www.utp.or.jp/book/b298418.html 

あと、自分が話す姿を動画や音声で聴いてみて初めて「あー」「えーと」「そのー」などの無意味な中継ぎ言葉が多すぎることにショックを受けます。それも意識していないとなかなか直らないですよね。 
以下、参考になりそうな箇所の本書からの抜粋です。
  
①自分がわかっていないことは話さない
「ほとんどの場合、聞き手は発表者よりもずっと少ない知識しか持っていないものです。このように聞き手の知識を過大視することから、コミュニケーションのすれ違いがしばしば生じます」(p.245)
 
「聞き手が知らないことを話さねばならない→調べてはみたもののこんなことぐらい聞き手は知っているはずだ→相手が知らないことを話さなければ……。このような自己循環が始まると、行き着くところは、自分自身がわかっていることと、まだ知らないことの境界付近での一人相撲です。実際の聞き手にとっては、これほどわけのわからない迷惑なことはありません。なにせ、話し手自身がまだよく理解していない(たいていは些末な)内容について、聞かされるはめになるのですから」(p.245)
 

 ②無意味・不適切な言葉は避ける

「「アノー」「ナンカ」「エート」「ソノー」といった意味のない中継ぎ語を極力なくすように努力しましょう」(p.248)

 

「逆に、1文は短くても、立板に水のような話し方をされると、聞き手は内容についていくのが精一杯で、考える余裕も質問を考える余裕もありません。適度な間をとり、重要なポイントは繰り返してもらえば、聞き手は非常に助かります」(p.248)
 
「丁寧すぎる言い回し(例:「発表させていただきます」や、受動態やあいまいな表現(例:「…と思われます」「…であるのかもしれませんが、よくわかりません」)の多用も避けるべきでしょう」(p.248)
 

  ③質問は自分の意見を述べる場ではない

 「もっとも悪い質問の仕方は、講演に対する自分の一般的感想や演者に対するお礼やらをくだくだしく述べたてたあげくに、いっこうに要領を得ない問いかけを発するものです。質問にも時間の制約があり、他の人も質問をしたいのですから、要点をまとめて手際よく述べるようにしましょう」(p.249)

 

「質問というのは、あくまで質問であって、自分の意見を述べる場ではありません。質問というかくれみののもとに、自分の言いたいことをとうとうと述べるというのは、演者のみならず、聴衆に対しても失礼です」(p.249)

 

 ④議論を無駄に戦わせようとしない

「ある現象に対して、異なるレベルで別の説明が可能なとき、それぞれの説明は並存できます。なのにそれをあたかも対立関係でとらえようとすると、意味をなさない議論に陥ってしまいます。ここで双方譲らなかったとすると、混迷は深まっても議論はいっこうに進展しないことでしょう。このような場合には、主張や意見を戦わすことをやめて討論を整理する作業に移らなければいけません」(p.250)