孤独な人にこそスポットライトは当たる

愛する意味 (光文社新書)

上田紀行『愛する意味』光文社新書、2019年より。

 

寂しいこと、孤独であることというのは、それ自体はそんなに人生で悪いことじゃない。「寂しい。誰からも構われない」という、単にその次元で終わったらそれは悲しいことだけれども、そのとてつもない寂しさは世界の深さにアクセスしていく。自分は何が本当に欲しいのか、自分は何を愛するのかということを考えていくきっかけになる。そうすればその孤独とか寂しさは、あとから考えてみると人生を豊かにしていくもので、自分の人生がこれだけ豊かになった、これだけ深くなっていった、あのときのとてつもない寂しさ、孤独感が自分を目覚めさせたんだと言えるようなものになるんだ。

 だから「こんなにたくさん人がいるのに、何で誰も自分のことを振り返ってくれないんだろう」というふうに思っている人に言いたいのは、それは実はとてもとても大きなきっかけになるんだよ、ということだ。

 そこで人生をあきらめて、「結局自分なんてそんなに大したことないものだから、しょうがない」と言うんじゃなくて、「あ、自分にもそういうときが来たな」と思ってほしいのだ。

 そしてぼくが言いたいのは、そんな君には今舞台上でスポットライトが当たっているということだ。誰もが君を振り向かない、誰からも見られていないように思えるかもしれないけれど、実は君には今人生という舞台のスポットライトが当たっているのだ。(pp.201-202)

 

意外に思えるかもしれないけれど、とっても寂しくて、誰からも見られてなくて孤独で、「何で自分だけ幸せがこないんだろう」というその状況は、実はそこで自分が主人公の道を歩んでいけるかどうかということが、逆に問われているときなんだ。だからそこでむしろ「私が主人公なんだ」と思ってほしい。古今東西、そんな孤独で寂しさにとらわれている人達が主人公になっている演劇とか映画はとっても多い。それは、そここそが大きなドラマが起こるところだから。そこにこそ人間とは何か、世界とは何かが描かれ、感動させられる場があるからなんだ。

 スポットライトが当たっている私が、次にどう行動するのか、君はそのドラマの主人公だ。今こそが自分の愛するものを探す旅に出る大きなチャンスなんだ。(pp.203-204)