「世の中には、世の中には役に立たないことをする人が必要」(池田晶子)

41歳からの哲学

池田晶子『41歳からの哲学』新曜社、2004年より。

※強調・下線は引用者

 学問というものが、本来、役に立たない金にならないのは当然なのである。また、ある意味でそれが閉鎖的に見えるのも、当然なのである。世の全体が、役に立つこと金になることを価値と信じて走っているところで、なんでそれらが価値なのか、そも世の中とは何なのかを、考えるのだからである。そうと信じ込まれている事柄を疑うことが、その事柄にとって役に立つことであるわけがない。(p.70)

 

 世の中には、世の中には役に立たないことをする人が必要なのである。そのような人こそが、本当は役に立つのである。「無用の用」、役に立たないことを考える人がいなくなれば、世の中どうなるか、明らかであろう。金もうけに奔走しながら真理を見失い、今や人々、自分が何のために何をしているのかを、全く認識していない。(pp.70-71)

 

 学者を大事にしない国は滅ぶと、孔子先生は言った。真理の喪失だからである。産学協同など馬鹿言っちゃいけません。科学という、もう一方の真理追求の学問ですら、金にならない分野は切捨てられてゆく。(p.71)