「傍観者の視線が逸脱を増幅させる加害要因にもなりうる」(徳岡秀雄)
作田啓一・井上俊編『命題コレクション社会学』筑摩書房、1986年より。
11.ラベリングと逸脱(H・ベッカー他)
1.人が逸脱者というラベルを貼られるのは、逸脱行為のゆえにというより、社会的マジョリティによって定められた同調・逸脱に関するルールが恣意的に適用されたためである。したがってこのラベルは、とりわけ社会的弱者に対して適用されやすい。(セレクティヴ・サンクション)
2.人は、他者によって逸脱者というレッテルを貼られ、他者から逸脱者として処遇されることによって、逸脱的アイデンティティと逸脱的生活スタイルを形成する。(アイデンティティ形成)(p.73)
伝統的実証主義者たちは、見えたことは客観的真実だと主張するが、ラベリング論者たちは、見ようとしたからその事実が見えたにすぎない、と「視線」を問題にする。そして第三者的に傍観してきたはずのわれわれの視線が、逸脱を増幅させる加害要因にもなりうるのだという危険性を思い知らさせてくれるのである。(p.79)