自分が面白がっていないことを他人に面白がってもらうことはできない(上野千鶴子)

上野千鶴子『サヨナラ、学校化社会』ちくま文庫、2008年より。 言語的な訓練に失敗したか、十分に受けてこなかった子どもたちが、偏差値四流校の学生たちです。でも、その人たちには知識はないかもしれないが、知恵はある。彼らは語り手が「なにを」言ってい…

国境を越える人々が無意識のうちに「壁」を作っている

宇野常寛『遅いインターネット』幻冬舎、2020年より。 ※下線・強調は引用者。 まず僕たちはあの3年前の、2016年11月8日のことを思い出すべきだ。あの日は世界を駆動していたひとつの理想が決定的に躓き、そして敗北した日だった。 その日行われたアメリカ大…

86歳のTwitterおばあちゃん

ミゾイキクコ『何がいいかなんて終わってみないとわかりません。』KADOKAWA、2016年より。 86歳のTwitterおばあちゃんとしてテレビで何度も紹介されているミゾイキクコさん。インパクトの大きいつぶやきの中から選ばれたものを収録している。 中には今の自分…

孤独がつらいと感じている人たちへ

クラーク・E・ムスターカス『愛と孤独』創元社、1984年より。 ※下線・強調は引用者 孤独とは、ひとりで生き、存在し、死ぬことの苦しみを体験することであり、また、静寂の中で生かされていることの美しさと、喜びと、驚きに目醒めることである。ひとりとは…

どろろ「守子唄の巻・下」より

アニメ「どろろ」(原作・手塚治虫)シーズン1エピソード6「守子唄の巻・下」より。 どろろ「おいら、おっかちゃんとずっと旅してて、いろいろ・・・。そん時、どんなに腹が減ってもおっかちゃんが絶対やらなかった仕事だから」 みお「そう。えらいおっかち…

「弱った人を救わない共同体としてのシステム」(上田紀行)

上田紀行『愛する意味』光文社新書、2019年より。 ※強調は引用者 (スリランカの――引用者)「悪魔祓い」のよいところは、その共同体の子どもたちが、小さいときから悪魔祓いを通じて、弱った人が再生していくようすを見ながら育っていくことです。そこで、も…

孤独について(三木清『人生論ノート』)

人生論ノート 作者:三木清 発売日: 2013/07/01 メディア: Kindle版 三木清『人生論ノート』新潮文庫、1954年(1992年・第86刷)より 物が真に表現的なものとして我々に迫るのは孤独においてである。そして我々が孤独を超えることができるのはその呼び掛けに…

「自殺はいけない」はいけない(松本俊彦)

もしも「死にたい」と言われたら 自殺リスクの評価と対応 作者:松本俊彦 発売日: 2015/06/02 メディア: 単行本(ソフトカバー) 松本俊彦『もしも「死にたい」と言われたら 自殺リスクの評価と対応』中外医学社、2015年より。 こちらの質問に対して、あるい…

もしも「死にたい」と言われたら(松本俊彦)

もしも「死にたい」と言われたら 自殺リスクの評価と対応 作者:松本俊彦 発売日: 2015/06/02 メディア: 単行本(ソフトカバー) 松本俊彦『もしも「死にたい」と言われたら 自殺リスクの評価と対応』中外医学社、2015年より。 精神科医療関係者のなかには、…

本の復権(橋爪大三郎)

www.keisoshobo.co.jp 橋爪大三郎『現代思想はいま何を考えればよいのか』勁草書房、1991年より。 ※下線・強調は引用者 書物とは、簡単に言うと、他者の思考の集積回路のようなものです。最近の人は本を読まない、ということが時々言われますけれども、本を…

家族で唯一生き残った50代の女性

紛争地の看護師 作者:優子, 白川 発売日: 2018/07/06 メディア: 単行本 白川優子『紛争地の看護師』小学館、2018年より。 7月14日。奪還宣言から5日が経過した。空爆の音がまだ続いている。 日本ではモスルに平穏が訪れたと思われているのだろう。奪還宣言を…

仕事の選択は「好きか嫌いか」ではなく「できるかできないか」(林修)

林修の仕事原論 (青春新書インテリジェンス) 作者:林 修 発売日: 2016/11/02 メディア: 新書 林修『林修の仕事原論:壁を破る37の方法』青春出版社、2014年より。 ※引用はソフトカバー版。強調は引用者。 僕は、好きなこと、やりたいことを仕事として選ぶと…

二項対立の崩壊は、一部の人々にとっては「世界の終わりの始まり」

ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか 作者:レイチェル・ギーザ 発売日: 2019/02/22 メディア: 単行本 レイチェル・ギーザ『ボーイズ:男の子はなぜ「男らしく」育つのか』ディスクユニオン、2019年より。 ※強調・下線は引用者 目まぐるしく変化するこ…

本格的な少年時代研究の不在

ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか 作者:レイチェル・ギーザ 発売日: 2019/02/22 メディア: 単行本 レイチェル・ギーザ『ボーイズ:男の子はなぜ「男らしく」育つのか』ディスクユニオン、2019年より。 ジェンダーステレオタイプが女の子の自尊心や…

「くそみたいな男」(勢古浩爾)

この俗物が! (新書y) 作者:勢古 浩爾 発売日: 2003/12/01 メディア: 新書 勢古浩爾『この俗物が!』洋泉社新書y、2003年より。 くそみたいな男がいる。夜になるとサラリーマンの居酒屋と化す中華料理屋で、背広姿の見るからにとろくさい三十代男が椅子にふん…

日本人のひ弱な自尊心(勢古浩爾)

この俗物が! (新書y) 作者:勢古 浩爾 発売日: 2003/12/01 メディア: 新書 勢古浩爾『この俗物が!』洋泉社新書y、2003年より。 日本人の自尊心はひ弱である。自尊心が傷つく、ということをこれほど恐れる国民もめずらしい、と思う。恥知らず、恥をかかす、恥…

この俗物が!(勢古浩爾)

この俗物が! (新書y) 作者:勢古 浩爾 発売日: 2003/12/01 メディア: 新書 勢古浩爾『この俗物が!』洋泉社新書y、2003年より。 「他人との比較」をすることはやむをえない。人情であり、われわれは仙人ではないからである。比較したあと、それを自分の中にど…

「学者なんかになった悲劇」(勢古浩爾)

まれに見るバカ (新書y) 作者:勢古 浩爾 メディア: 新書 勢古浩爾『まれに見るバカ』洋泉社新書y、2002年より。 ※下線・強調は引用者 わたしは、どんな問題にたいしても答えを出す学者、評論家、総じて知識人をほとんど信用しない。だって、そんなことありえ…

「ぶざまな人生」(勢古浩爾)

ぶざまな人生 (新書y) 作者:勢古 浩爾 メディア: 新書 勢古浩爾『ぶざまな人生』洋泉社新書y、2002年より。 ※強調・下線は引用者 インテリになるほどの知識も意欲もないし、単純にその場その時に溶け込んで、集団のなかで明朗を演じる大衆にもなれない(大衆…

「哀しい王様の争い」

堀井憲一郎『若者殺しの時代』講談社現代新書、2006年より。 僕たちは、個人個人で社会にアクセスするシステムを選択してしまった。もう戻れない。映画でさえ、自分の部屋で勝手に見るようになってしまった。わかりやすい身近な集団に属することを避け、もっ…

「わかってから書いてはならない。書かないとわからないからである」

小笠原喜康『最新版 大学生のためのレポート・論文術』講談社現代新書、2018年より。 卒業論文は、ある意味で、小学校の「自由作文」よりはずっと簡単である。なのに少し突っ込んで調べていくと、急にわからなくなる。始める前にはわかっていたつもりが、少…

「論文は、近代の中で分断され商品化された個をとりもどす、ポストモダンの自分物語である」

小笠原喜康『最新版 大学生のためのレポート・論文術』講談社現代新書、2018年より。 ※強調・下線は引用者。 最近、学士力とかジェネリック・スキルというコトバがいわれるようになってきた。これまでも、いろいろな「力」のコトバがいわれてきたので、一時…

「杉本も干し柿を食べたら、戦争へ行く前の杉本に戻れるのかなあ」

アニメ『ゴールデンカムイ』第二期 エピソード17より 杉本:「アシリパさん、鈴川は悪人だ。悪人は人の心が欠けているから、普通の人間より痛みも感じないはずだ。だからいちいち同情しなくていい」 アシリパ:「子供だと思ってバカにしてるのか!そんな理屈…

デマ情報発信者は英語力が弱い

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!――リスク・コミュニケーション入門』光文社新書、2014年より。 日本の医療者は、絶望的なまでに英語力が欠如しています。医師も、看護師も、その他多くの医療者も。(中略)これからは2ヵ月弱で医学知識が倍加する時…

患者の病気についての個人情報保護は「知る権利」よりも価値が高い

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!――リスク・コミュニケーション入門』光文社新書、2014年より。 医療機関の場合、個人情報の保護と情報公開のバランスは、いつも難しい問題です。 基本的に、個人を特定しうる情報は一切公表してはいけません。これが…

「井の中の蛙」は質問ができない / 医療の「タコツボ」時代の終わり

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!――リスク・コミュニケーション入門』光文社新書、2014年より。 質問をする能力というのは、「私には分かりません」と認識する能力のことを言います。私にはここが分かっていない、理解できていない、という自覚がある…

「日本人はシャイだから」だけでは説明できない日本人の質問下手

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!――リスク・コミュニケーション入門』光文社新書、2014年より。 海外の方には「日本人は質問をしない」とよく言われます。それに対して、日本人はシャイだから、とよく説明されます。それもあるとは思います。講演のと…

情報発信の技術が稚拙な大学の講義

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!――リスク・コミュニケーション入門』光文社新書、2014年より。 プレゼンテーションについては、最近はTEDなど、上手なプレゼンのひな形が出てきました。医療においては、ケアネットなど、エンターテインメント性を持…

無関係の人が過剰にコミュニケーションに参画することの弊害

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!――リスク・コミュニケーション入門』光文社新書、2014年より。 以下の引用箇所、全くもって岩田先生の言う通りだと思うけれど、人間の嫉妬心・ルサンチマンがどれほど強力で破壊的かを侮るべきではないと思う。それを…

グローバル化と新興感染症

押谷仁「感染症のグローバル・リスク」遠藤乾編『シリーズ日本の安全保障8 グローバル・コモンズ』岩波書店、2015年、pp.155-184より。 それまでどこにも存在しなかった病原体(ウイルスや細菌など)が突然出現するのではなく、通常はそれまで他の種に感染…